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キトサンと人工皮膚~カニ殻キチン・キトサン講座

1997年7月21日、名古屋東急ホテルにて開催された「キチン・キトサン協会講演会名古屋大会」より、キチン・キトサンの人工皮膚用途についての講演をご紹介いたします。(「キチン・キトサン協会誌」Vol.35より)

名古屋市立大学医学部整形外科学教室教授
    同附属病院長 松井宣夫

抗炎症や抗菌、免疫活性など多彩な生理活性 / キチン繊維、半年後に生体内で全て消失 / 皮膚の欠損修復に、キチンを移植 / 皮膚再生、豚皮よりキチンの方がきれい / 創傷治癒に有用なキチン・キトサン / 軟骨の欠損にも、キチンが応用

抗炎症や抗菌、免疫活性など多彩な生理活性

蟹の甲羅は、通常は捨ててしまいます。甲羅が1 千億トン年間捨てられる様です。キチン・キトサンはこれが原料というのは大変素晴らしい事じゃないかと思います。

キチンは、エピ、蟹、昆虫、あるいはカビ等、天然に豊富に存在しています。地球上ではセルロースに次いで多い量です。一般的に生成方法は蟹の甲羅をアルカリ、酸処理して白色の粉末が出来ます。

キチンはN-アセリルグルコサミンをモノマー単位とした多糖類の一種です。アセチル化して出来た物がキトサンです。キチン・キトサンの物理化学的な性質を利用した色々な応用研究が進んでいます。

一つは生理活性としては、抗炎症、抗菌、免疫活性です。それから生体親和性として生体吸収を良くします。そして吸着性という性質がありまして、例えばエンドトキシンとか生体に害になる物を吸着してしまう性質があります。

もちろん金属イオンもありますし、色々な生体成分でも悪い物を吸着してしまうという事です。吸着するだけではなく、それが排泄されます。それから色々な透過性を高めるという事で、透析作用があります。

また吸湿性という事で、髪の毛をカラスの濡れ羽色にする、しっとりさせる作用もある様です。という事でキチン・キトサンに色々な作用があるという事がお分かりになるかと思います。

キチン繊維、半年後に生体内で全て消失

キチンが、どの様に分解されるかという事ですが、キチンから二つの系に分けられます。一つはキチン分解酵素のキチナーゼによる分解、それからもう一つはキトサンを経てキトサナーゼにより分解されるという系です。キトサンからキトサナーゼにより、ダイマ一、それからグルコサミニダーゼによりグルコサミンになるという系です。

他は、キチナーゼによってオリゴキチン、更にキチナーゼによりダイマ一、N -アセチルグルコサミニダーゼによりN -アセチルグルコサミンに変わる系です。

キチンは生体内酵素のリゾチーム、あるいは、N -アセチルグルコサミダーゼによりモノマーのN-アセチルグルコサミンに分解されます。そして炭酸ガスとグルコプロテインとして再利用されます

キチンの生体内の吸収を調べるために、キチン繊維をラットの後ろ足に埋め込み、ナイロン糸の場合と比べてみました。結果は、埋没して2週間の標本では余り変わりはありませんでした。

次に8 週間、2か月後の標本では、少しキチン繊維の方が細くなっています。これはキチンが吸収された事を示しています。それに対しナイロン系は依然として生体内に残っています。

キチン繊維の方は形が場所によっては消失していました。6 か月後には、キチン繊維はすべて消えています。要するに生体内に吸収したという事です。

そしてナイロン系の方は相変わらず残っていました。ですから、キチンの方はグルコプロティンになる物と、炭酸ガスになってしまうという事で、綺麗さっぱり局所には残らないという事です。そういう意味から、キチンは異物性もない、副作用も残らないという事になります。

皮膚の欠損修復に、キチンを移植

我々の整形外科の分野では、よく火傷とか、怪我をして皮膚が無くなってしまう症例があるのですが、そういう時には、他の場所から皮膚を取ってきて、それを植皮する。自分の皮膚を植えるのが一番良いですから、お腹の皮膚から取って、その傷口を塞ぎます。

開放骨折後に骨を丸出ししておくと骨が腐ってしまったり、あるいは骨髄炎を併発したりして合併症が出ますので、出来るだけ早く傷のある所に皮膚を被せた方が良い訳です。皮膚を取った所は逆に皮下が丸出しになってしまいます。

そういう所に一つはキチン被覆剤、それからもう一つは、これももちろん皮膚の欠損がある時によく使われるのが、凍結乾燥の豚の真皮。これも非常に広い場所の火傷の場合に役に立っている物です。

それぞれ半分づつ、キチンと凍結乾燥した豚の真皮の比較実験をして形態学的に調べてみました。

それで、見ると、マクロファージ、リンパ球、白血病には色々なバイ菌を捕らえる性質があります。それぞれ比べたところ、キチンを移植した方は非常に早く1 週間位で、マクロファージ、白血球が無くなってしまっていました。

リンパ球は少し遅れて、そして段々少なくなって、2週間位の間にはもう全て無くなってしまいました。豚の真皮を移植した方はどうかというと、結構長い期間細胞が残っていました。マクロファージは20 日位で無くなり、白血球も3週間位かかって無くなりました。この残り方が豚の方が少し長いです。

皮膚再生、豚皮よりキチンの方がきれい

それからリンパ球 はどうかというと、もうずっと残っていました。要するに残っているという事は、炎症が長く残っている事を裏付けています。こういう事実からキトサンの方は炎症反応が割合に少ない、端的に言えば、刺激もその分少ないという事になると思います。

キチンの抗原抗体反応というのをご存じかと思いますが、免疫学的に調べてみますと、キチンの方はT細胞が大体1 週間位で無くなってしまいます。ところが豚の凍結乾燥真皮の方は3 週間でも依然として残っています。

一方、B細胞では9日位で無くなる、という事で抗原性という意味からは非常に少ないという事です。ですから植える事によって起こる色々なアレルギ一反応も少なく、刺激性もかなり少ないという事がキチンの方が言える訳です。

実際にヒトに使ってみた場合、塗布後のキチンの方は血液の吸収もよく吸着しています。これが12 日目では真皮の再生によってひび割れして来ますが、後脱落します。

豚の方は、21 日目に皮膚が再生して来ました。キチンの方は非常にすべすべしています。

しかし豚皮の方はまだ何となくデコボコしているという事で、皮膚の再生ということからも豚皮よりもキチンの方が綺麗に治る事がこれでお分かりになると思います。

創傷治癒に有用なキチン・キトサン

次に、創傷治癒に対するキチンの作用ですが、血管新生が非常に良いです。そしてマクロファージももちろん出て来るのですが、それは早期に消失してしまいます。

炎痕性の細胞も割合に早く状態が良くなるという事で炎症反応も割合に早く消えてしまうという事です。ですから傷の治りも良いという事になるわけです。

キチンのメディカルの分野への応用という事ですが、我々整形外科医はどうしても骨折の治療をする時、変形性関節症の患者さん達に人工関節を使ったり、生体材料の活用が多いのです。

生体の一部が損傷を受けたり欠陥を起こした際、それを修復する物質というのが必要になります。そう言った意味でキチンは興味のある所です。

生体材料としては糸、皮膚を縫う時に使う縫合糸ですね。普通は絹糸、ナイロン糸等使ってますが、それはもちろん吸収しません。ですからわざわさ後から抜糸します。しかし合成の物、キチンですと吸収してしまいますから後から抜く必要がないという利点があります。

我々の所では人工関節とか、骨折の手術をしたりしますから、傷が綺麗に治る必要がありますので、こういう領域にもキチンというのはこれから応用可能ですね。

また、腹膜炎等起こした場合、お腹の中にチューブを入れて膿を出す事があります。そういう場合に、ゴム、シリコン等を使っていますが、こういった領域にもキチンの応用が可能です。

それから創傷保護剤です。皮膚を取った後、あるいは火傷を治す場合にもキチンを使うのも非常に有効です。あるいは人工血管も同様です。我々整形外科の領域で生体材料というのは沢山使われています。

軟骨の欠損にも、キチンが応用

それから人工靭帯、一番頻繁なのは不幸にして、スキーに行って靭帯損傷を起こします。十字靭荷損傷、あるいは側副靭帯損傷。こういった場合に今靭帯の治療には、自分の靭帝を切って植えるという事も行っておりますが、色々な人工靭帯も使われています。

それから人工関節ですね。現在では金属とプラスチックの組み合わせ、セラミックとポリエチレンの組み合わせと色々ありますがこれらは人工材料ですね。

これは骨折した時とか、骨に腫瘍が出来て、そこを取った場合に骨が欠損します。そういう場合に何を入れるかというと、普通は自分の骨を骨盤から取って植えたりします。

そういった所に、人工骨としてハイドロキシ、アパタイト等を植えます。それから後は人工筋膜ですね。それから今後人工半月板も開発されています。

ざっと整形外科領域を見ましてもかなり色々な生体材料が使われてます。これらは常に生体に副作用の少ない物である事が必要条件です。皮膚が無くなった所にキチンの膜を使うように、軟骨の欠損した場所にキチン等が応用される様になると大変面白いのではないかと思います。


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